企業が30歳前の人材を採用したがるのが合理的な理由

先月書いた日本の殆どの問題って、やっぱり将来への不安だと思うんだというエントリが、アップ後しばらくしてからPVを伸ばしていて、ブックマークやはてなスターをいただいています。僕がブログで書きたかったテーマがキャリア・雇用のことなのでこれは素直に嬉しいです。特にこのエントリは変なテクニックに凝らず自分の気持を正直に書いたものなのでなおさら嬉しかったりする、改めてお礼を申し上げます。

さて、いただいたブックマークには沢山コメントがついていて、それはネガティブなものだったりポジティブなものだったり。人それぞれ立場によって感じ方が違うのは分かっていたけれど、改めて雇用問題の難しさを感じます。ただ、一つ非常に気になったコメントがあったので、これについて補足したいと思います。

「雇用の流動化」は多分政府が音頭を取っても当分はどうにもならんよ。「転職は3度まで」とか「30歳すぎてからの転職はちょっと......」といる奴らがたくさんいるからどうしよもない (ブックマークコメントより)

このブックマークコメントにははてなスターが幾つかついているので、かなりの人の共感を得ているのだと思いますし、僕もこのコメントにあるような採用担当者の傾向は事実あると思います。ただ僕はこのコメントは、問題を逆から見ていると思っています。

採用担当者は今の日本の終身雇用・職能給制度(年功序列とも言う)を前提とした雇用制度(日本型雇用)をベースにした状況下で合理的な判断をしているのです

今の日本の雇用制度は、正社員として雇用した人を理由なく解雇することはかなりハードルが高いです。これがいわゆる解雇規制。解雇規制は中小企業では有名無実化しているとの指摘もありますが、依然として大手企業では順守されているのが現状です。

企業の立場からすると一度採用した社員はクビを切れないわけで、企業にとって人材採用は必須だけれど失敗の許されない、非常にリスクの高い行為になっています。それどころか年齢を重ねるごとに給与を増やすことが前提になっているのだから、どうしても企業の採用基準は、給与を安く抑えられて配置転換のつぶしが効く(スペシャリストよりゼネラリスト)、つまり大卒の新卒が一番合理的という事になるわけです。

この現状を変えるには、どうしても解雇規制制度を変えないといけない。ただそうすると一時的に職を失う人が大勢出てくるはず。だから信頼できるセーフティネットの拡充が必要なのです。それがベーシックインカムなのかどうかは僕も自信がないですけど、現状一番合理的かなと思っています。

ところで僕は大学卒業後、最初に就職した一年目に体調に大きな問題を抱え、実質的に一度レールを降りた経験があります。そのときに今の日本の雇用制度の大きな矛盾に気付き、僕自身も含めて多くの人の幸せのためにはこの制度を作りなおさないといけない、と感じるようになりました。僕は日本人みんながいわゆる「マッチョ」になれるとは思っていないし、そもそも僕自身が全然マッチョじゃないです。ただ、普通の人でもレールを降りたり乗り換えたりできる世の中が絶対に良いと真剣に思っているのです。だって、この裕福な国で年間3万人も自殺者が出るなんて、、どう考えてもおかしいですよね。南米のもっとずっと貧しい国だって、日本人よりずっと幸せそうに生きているのに。。